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夜道を早足で歩く泉の背中を眺めながら、浜田は小学生の頃の記憶を辿っていた。
確かあの時は、泉が迎えに来たのだ。
(中略)
「ごめんな、ホントごめん」
繋いだ手を握り直して、少し身を屈めて。
顔を覗きこむと、泉は目に一杯涙を溜めてふいっとそっぽを向いた。
「ホントごめんな」
いつもそうするように、泉の髪をガシガシ撫でてやろうと手を伸ばして――、けれど、その手が届く一歩手前で、泉が浜田の手を払いのけ、繋いだ手も振りほどいてしまった。
「ちょっとじゃ意味ねぇじゃん。せっかく呼びに行ったのに」
「――泉?」
「浜田のばーか、ばーか。デベソ」
「ちょっ……、泉」
「ばーか」
遠ざかる捨て台詞は、人ごみの中に泉の姿が消えてしまってもしばらく聞こえた。
けれど、デベソはともかく泉を初めて泣かせてしまったことがショックで、浜田は後を追えなかった。
あの後どうやって仲直りしただろう。
はっきりと記憶にはないけれど、泉との喧嘩なんていちいち覚えていないほどの日常で、いつだっていつのまにか隣に居るのだから、案外翌日にはけろっとして一緒に野球でもしていたのかもしれない。
それ以来――、かどうかは実は記憶が曖昧だけれど、あの少し後くらいから、泉は浜田の後ろを歩かなくなった。
いつも隣に並んで歩くか、浜田の少し前を大股でドスドスと歩くかだ。
きっと、遠ざかっていく背中を見るのが本当に悲しかったのだろう――、なんて考えると、やっぱり浜田の胸は痛んでしまうから、そんなときは浜田も大人しく泉の後ろを歩くことにしていた。
まあ、今となっては、だからどうしたというくらいの些細なことで、意識しているわけでもなくそれが二人の当然の距離感になっているのだけれど。
夜道を早足で歩く泉の背中を眺めながら、浜田はそんな小学生の頃の記憶を辿っていた。
十二月に入って途端に寒くなり、夜の訪れも早くなった。
今日のようなミーティングだけの日も、夏の間はまだうっすらと陽が残っていたけれど、今の季節はもう五時過ぎにはあたりは真っ暗だ。
はぁっと息を吐くと、白いモワモワが星のくっきりと冴える夜空に昇っていった。
「いーずみ、もちょっとゆっくり帰んない?」
「さみぃもん。さっさと帰ってこたつに入ってっから、お前もさっさと帰ってあったかい飯作れ」
「わぁひどい。オレが暖まる時間とかは計算外なわけ?」
「わぁひどい。その間にオレが凍死して飢え死にしても良いわけ?」
「民家で凍死できるもんならしてみろ。っつうか、マジで待ってってば。良く考えたら、買い物の荷物全部オレが一人で持ってんじゃん」
そう言うと、ようやく泉は立ち止まり、面倒臭そうに振り返った。
「ちっ、そこに気付きやがったか、浜田の癖に」
「ひっでぇ、確信犯かよ」
だからと言って別に腹は立たないのだが。
一応形だけの抗議を込めて泉の傍まで来たところで立ち止まってみると、泉はとても大儀そうにポケットから手を出し、浜田の前に差し出した。
「ほら、どっちか片っぽ持ってやる」
そうして浜田の両手に一個ずつぷら下がった買い物袋と浜田の顔を悪戯な視線で見る。
片方の袋はキャベツと牛乳とペットボトルのお茶と詰め替え用のシャンプー入りで、もう片方はしめじと豚肉のパックとポテチと食パンだ。
「オレは別にどっちでも良いけど?浜田はオレ様にどっちを渡す?」
「うー」
「さあどうする、試されてんぞ」
「試されてんのは荷物の重さじゃなくてオレの愛の重さなんだな」
「ほれほれ、さっさと渡さねぇと、どっちも持ってやんねぇぞ」
鼻まで覆うようにグルグル巻きに巻いたマフラーの隙間から白い息を漏らしながら、ちょこっと見えている目が面白そうに細められる。
「こえぇー。けど、あえてこっち!」
「げぇっ、てめぇ、普通は軽い方渡す場面だろうが」
「どっちでも良いって言ったじゃん」
「その奥ゆかしいオレの気遣いを汲み取ってだなぁ」
「軽い方渡したら渡したで馬鹿にすんなって怒るくせに」
笑いながら歩き出せば、戯れるように浜田の尻に蹴りを入れて、泉がサクサクと駆け寄り、隣に並ぶ。
ようやく解放された片手を泉の肩に回すと、泉はとても嫌な顔をした。
「アホ。人が見んだろ」
「誰も居ないじゃん。裏道だし」
「誰かがひょっこり角曲って来たりしたらどうすんだよ」
「大丈夫。じゃれてるようにしか見えないって。男同士が肩組んで歩くのって別に変じゃないじゃん?」
「まあ、そっかもだけど」
珍しく泉があっさりと引いたのは、面倒だからなのか言っても無駄だと思ったのかは分からないけれど。
もしその理由が「あたたかかったから」だったらどれだけ嬉しいだろうと、ふとそんな思いが浜田の胸をよぎった。
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冒頭部分〜いきなり中略ですっ飛んで、途中です。捏造なので(笑)
覚えてもいないようなつまんないことばっかだけど、会話が途切れず気も使わない。
なんて関係だったら良いなぁ……という夢見がちなお話なので、全体的に会話多めです。
わりと軽めのお話です。
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