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「見て見て泉、いい感じじゃない?」
「はぁ……」
浜田の部屋に申し訳程度についているベランダで、背中を丸めて手についた土を払い落としながら、浜田が肩越しにオレを振り返る。
「なぁ、どうよこれ」
いや、そんな子供みたいな無邪気な笑顔でどうよと言われても――。
とうとうここまで来たか――、という感想しかない、悪いけど。
今日オレがぐったり疲れてやってくると、ベランダにしゃがみこんだ浜田は上機嫌でオレを手招きした。
覗き込む視線の先、浜田の目の前には、突然何を思ったのか白いプランターが二つ。
聞けば先週のうちに肥料を入れて馴染ませていたんだと言う土の色は、毎日オレが踏みしめている土よりは少し湿った色をしていて、けれどその辺にある土とはちっとも違って見えない。
その土に、浜田がぽつぽつと穴を開けては小さな粒を流し込み、埋めてまた土を慣らす。
「どうよどうよ。いい感じでしょ?」
「いやぁ……、どこいら辺がどういい感じなのかオレにはさっぱり――」
「待ってろよぉ。数ヵ月後には美味いナスとトマト食わしてやるからな」
至極上機嫌な浜田はオレの適当な受け答えなんてちっとも聞いちゃいない。
手先が器用で料理も上手な浜田のことだ。
そのうち餃子を皮から作るとか、カレーをスパイスの配合からやるとか、そんなこと言い出すんじゃないかとは思ってたけど、まさか素材から育てるなんて言い出すとは思わなかった。
すっかりご機嫌の浜田の肩越しに覗き込むプランターの土は、やっぱり何度見てもただの土にしか見えなくて、これをいい感じと言われても、残念ながら返してやれる反応は呆れ交じりの溜息だけだ。
「これがホントに食い物になんの?」
「なるさ。まかしときなって」
「ふぅん」
田島の家では畑で野菜を作ってるらしく、ランニング中によく、じいちゃんとかおばさんがスイカとかきゅうりとかをつまみ食いさせてくれるけど、あんなものが一般家庭のしかもベランダで作れるなんて、想像もつかない。
まかしとけと言われてもなぁ、この浜田の自信の根拠はどこいら辺にあるんだろうと、相変わらずの能天気な笑顔にいよいよ溜息が漏れる。
「泉がウチに泊まる日は泉が水やり当番な」
「はぁ?」
「水やり」
「何でだよ。お前が育てんだろ」
「違うよ、オレは泉と一緒に育てたいの」
一緒に――って所を強調する浜田は、何故だか知らないが自慢げに胸を張っていて、その裏の無さそうな笑顔がちょっとだけムカつく。
「面倒臭ぇ」
「良いじゃん、週に一回だろ。他の日はオレが大切に育てるからさ、たまに来たときだけでも水かけてやってよ」
一緒に育てたいんだよ――、と、もう一度甘ったれた声で言って、首をかしげてオレの顔を覗きこんでくる。
まぁ、そこまで言われれば別に意固地になるほど手間なことでもないし、なにより、こんな土を盛っただけのプラスチックのケースの中で食べ物が育つなんて、考えればちょっと楽しみでもある。
ただ問題は、一体どうすれば良いのかがオレには想像もつかないってことくらいだ。
なにせ、植物を育てるのなんて、小学校のときの朝顔とひまわり以来だ。
「――良いけど。どうすれば良いのかオレ分かんねぇぞ?」
「うん。それはオレも」
「はぁ?」
「大丈夫だって。一回にどんくらい水やれば良いかとかは、これからお勉強」
「そっからかよ」
見切り発車もいいところだ。
食べ物育てるのってそんなに簡単なのか?こいつが特別能天気なだけなんじゃないのか?呆れてものも言えないとか思うオレは神経質すぎるのか?
「大丈夫、あんま難しくはないらしいし、ちゃんと育て方習ってくるから。それよりさ、すっげぇ楽しみだねぇ」
とか言いながら、そんなてへへとか照れたように笑って見せられてもなぁ。
悪いけどオレ、なんだそれなら楽勝じゃん、とか言ってやれそうにないぞ?
けどまあ、楽しみってのは同感だ。
植物を自分で育てるのなんて学校の授業以外では始めての経験だ。こんななんでもない、土を真っ平らに敷いただけのプランターの中で食べ物が育っていくなんて、考えただけでわくわくする。
そういえば夏前の合宿で、自分たちで摘んできたふきに妙な愛着がわいて、あんな雑草みたいなふきが可愛く見えるねなんて栄口と話してたけど、自分で育てたりなんかしたら可愛いどころじゃなくて、食べられないんじゃないか――、なんて、そんなこと考えるのはちょっと気が早いかな?
それに、浜田と一緒に育てるってのも、考えればドキドキする。
意味ありげに「一緒に」って言葉を使った浜田が実際どんな意味を含んでそう言ったのか、オレにだって分かる。
「ちゃんと育て方調べとけよ」
浜田の肩越しにプランターを覗き込みながらそう言うと、浜田が嬉しそうにへにゃりと笑ったから、ちょっとだけ気恥ずかしくなった。
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冒頭部分です。この先は今から書きます。・・・、間に合わせます、頑張って><
表紙描いてる途中でうっかり最遊記読んでしまったので、オレンジの紙飛行機はホンの出来心(笑)
泉君の目が緑色なのも、ホンの出来心; |
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